音楽カリキュラム編成の基本的な考え方


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【Ⅰ】保育の場の音楽とは何か

3.保育の場において、音楽の三要素がもつ意味

(2)メロディ(旋律)
②メロディに表情をつける
 さて、子どもたちと歌うとき、あるいは奏でるときに、メロディに表情をつけることで、より音楽的な表現を可能にすること、音楽の世界に子どもたち自らが入り込んでいけることが蔑ろにされてはこなかったでしょうか。
 覚えて歌う、まちがえずに演奏することにばかり大人の関心が向かってしまって、強弱をつけたり、だんだん大きくしたり、小さくしたり、といった音楽に表情をつけることを子どもに求めてみれば、それを子どもたちが楽しむことに、私たち保育者気付くに違いありません。
 歌は、悲しい歌詞を楽しく歌ったり、楽しい歌詞を悲しく歌ったりすることができる不思議な表現の世界です。「楽しく歌う」ためには、あるいは「悲しく歌う」ためには、楽しい気持ちや悲しい気持ちになればいいのですが、その結果として音楽には微妙なニュアンスが加えられていきます。保育者はそれに無頓着であってはならないのです。
 たとえば、上昇するフレーズは出かけていく、開かれていく、発展していくといったようなイメージを喚起します。反対に下降するフレーズは、帰っていく、戻ってくる、終息に向かうといったイメージをもたらします。おなじように、クレッシュンドやデクレッシュンドも、上昇や下降とよく似た効果を与えることができます。加えて、音楽が終わりを迎えるとき、だんだんテンポを落とすこと(リタルダント)で、気持ちにとどく終止を迎えることができるでしょう。
 音の強弱も音楽に大きな明暗を与えることができます。フォルテやピアノによって求められる全体的な強弱の対比はいうまでもありませんが、音符の一つ一つに細かい強弱を与えることで、フレーズを"うたう"ことができます。それは歌曲に限らず、器楽の演奏においても重要であり、濃やかな音の強弱の変化はリズム感にも影響を与え、その人のその人らしさの表現を決定付けるといってもよいでしょう。

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