音楽カリキュラム編成の基本的な考え方


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【Ⅰ】保育の場の音楽とは何か

2.保育の場の音楽

  私たちの生活が音楽に満ち満ちているように、保育の場にも多くの音楽が用意されています。朝の集まりの会や食事のまえなど、音楽を使って子どもたちの気持ちを切り替える風景は、保育の場でよく目にします。書店の保育図書コーナーへ足を運べば、季節の歌、行事の歌、手遊び、歌遊び、器楽合奏、オペレッタ、リトミックなどの教材がところ狭しと並んでいて、保育者が子どもたちのために日々の保育に多くの音楽を準備していることが窺われます。ところが、保育として子どもの音楽を考えるとき、はたしてこのように保育者によって用意されるものだけを音楽としていてよいのでしょうか。
 子どもが身体を揺らすとき、子どもが腰掛けて足をぶらぶらさせるとき、子どもの身体にはリズムが生まれています。喃語は、意味の言葉としては情報が少なくても、音楽的な感情表出と捉えればリズミカルでありメロディックですらあります。
 あるいは、保育者が子どもに語りかけるとき、その音声は少し高くなり、音節を区切って繰り返し、表情もゆたかです。それを音楽的といってもよいでしょう。それはおそらく、音声言語を音楽的に身体に響かせることが、子どもに気持ちを伝える最良の手段であることを保育者が経験的に知っているからではないでしょうか。このような音楽以前の音楽も、保育の場では大切な音楽です。
 ここでは、音楽以前の音楽を「表出される音楽」、保育者によって用意される音楽を「表現される音楽」とします。「表出される音楽」に着目することで、保育の場の音楽が保育者によって一方的に指導されるようなものではなく、子どもからののっぴきならない要請であることが確認されるでしょうし、それがやがて「表現される音楽」を楽しむための素地にもなることが理解されるでしょう。

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