第5章 保健は保育の土台


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第2節 予防ということ

2.衛生とは何か、安全とは何か

 有機物は死ぬということ、死ぬと腐るということ、腐ると悪臭を放つということを体験的に知ることで、不潔とは何かを子どもが知ることになればと思います。汚れてもいない手を外から帰ったからという理由だけで丁寧に洗えといわれても、細菌やウイルスは目には見えませんから子どもの理解の外のことになります。でも泥で汚すだけでなく、悪臭も含めて手が汚れ、それを石鹸で洗い流していい匂いになったとき、子どもは体験的に清潔とは何かを知るのではないでしょうか。発汗を放置したときの臭気も同じです。
 安全も同様に、危険を言葉だけで教えても無理があります。だからといってわざわざ子どもを危険にさらすわけにはいきませんが、子どもに判断を委ねることで子どもが危ないことを実感する機会が生じることもあります。
 岩屋こども園アカンパニには木登りのできる木が何本もありますが、落下して救急車を呼ばなければならないような怪我は幸いにして一度もありません。だからといって安心してはならないのですが、なぜ大怪我に至らないかというと、保育者が登り方を教えたり、危ないと制したりしないからです。子どもは自分ができることとできないこと、できそうなこととできそうにないことをよく分かっています。ですから、憧れるのです。抱いた憧れをいつかは実現したいとそのときを待っています。そのために少しずつですが実現に向けた努力を重ねます。大人から見れば同じことの繰り返しに見えても、子どもの中では刻一刻と変化しているのです。あるいはしばらくそっと取っておいて、半年も一年も経ってから再び挑戦する姿も稀ではありません。でも、そこで保育者が先を急いで登り方を教えてしまうと、子どもは心と体で判断することができなくなり、無謀な戦いを挑むことになり、それが怪我に繋がってしまうのです。

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