第4章 保育に備えること、省みること


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1.保育の計画と記録、評価、及び職員の資質向上に関する骨子

(6)保育者には“懐の深さ”を

 ここまでのキーワードによって描かれたこども園像を実現する保育者は、目先の指導計画や教材、環境構成に頼るわけにはいきません。しっかりとした生活者として、保育の場に臨まなければなりませんし、子どもに何を求めるかは、日々の暮らしの中で"そうせずにはいられないからそうする"というようなぎりぎりの選択の積み重ねです。
 保育環境を手入れするときもそうです。熟練した職人のように、慌てず騒がず必要なことを必要なだけ勤務時間内にきちっとこなさなければなりません。その上に、プライベートな時間での経験もまた、保育の場にフィードバックされることに自覚的でなければなりません。
 待ったなしの真剣勝負の場に臨む保育者に求められるものは、人としての懐の深さでしょう。研修内容や研究成果を咀嚼し、現場に応用する力も、結局のところ人としての懐の深さなしには、一人ひとりの子どもにフィットさせることなどできません。生半可な知識を保育の場に持ち込もうとすると子どもたちに見透かされてしまいます。とっさの判断でも使えるもの、無意識のうちに心と体が反応してくれるものだけが、保育者としての技量なのです。
 こども園の予算の80%は人に使われます。それは保育の仕事が人による手仕事であるからでしょう。人手を充分にかけなければ子どもは育ちません。その人手の質は、保育者一人ひとりの懐の深さによって高められてゆかなければなりません。

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