第1章 子ども時代を子どもらしく生きる


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第3節 保育の目標  私たちの目あて

1.もうひとりの自分と、ともに生きる

 今夜は何を食べようか、どんな服を着て出かけようかなどと、人はいつも考えています。そのような日ごろの些細なことばかりではなく、"あんなふうに云うんじゃなかった"と、人を傷つけてしまったひとことをふり返って後悔したり、"あの人はどう思っているんだろう"などと、相手の気持ちが知りたくなったりしたとき、人は自分の中の、もうひとりの自分と対話します。そのもうひとりの自分が自分に甘いと、容易なほうへ、楽なほうへと逃げようとします。とはいうものの、自分に厳しすぎて、本来の自分がぽきっと折れてしまっては本も子もありません。ですから、ほどほどのもうひとりの自分を自分の中に育てて、うまく折り合いをつけながら生きてゆくことが大切になります。
 もうひとりの自分に褒めてもらったり、叱ってもらったり、励ましてもらったりして、ひとは生きているのです。そのもうひとりの自分が自分の中に生まれるまでは、周囲の大人がいろいろと助言してくれるのですが、もうひとりの自分が育つにしたがって周囲の大人の助言は減り、気づくと周囲の大人ともうひとりの自分が交替しています。そうなると子どもは周囲の大人との距離を測りながら生きてゆくのですが、それでも人はひとりでは生きられないので、あらためて周囲の人の存在が意味をもつようになります。

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