第1章 子ども時代を子どもらしく生きる


  • 魔女によって操り人形にされてしまった囚われの妖精たちの踊りです。オペレッタ「椎の実の森」第2幕より
    魔女によって操り人形にされてしまった囚われの妖精たちの踊りです。オペレッタ「椎の実の森」第2幕より

第2節 保育の方針  私たちのゆくえ

3.感性と想像性、創造力  ―心がゆたかになる―

 「だいすきなお父さん」と題された絵には、祇園祭が活写されていました。四つ切画用紙が横長につながれた、まるで屏風のようなこの絵を描いた男の子のお父さんは、祇園祭が大好きで、この子は物心ついた頃から毎年、鉾見物を欠かしたことがなく、「だいすきなおとうさん」を描くことは、おとうさんが大好きな祇園祭を描くことだったのです。昼食をはさんで4時間以上もかけて「だいすきなおとうさん」を仕上げました。
 岩屋こども園アカンパニを代表するオペレッタ「椎の実の森」には森を滅ぼそうとする老魔女バルバラが登場しますが、このオペレッタに出演した女の子が「どうしてバルバラは悪い人になってしまったの?」と、保育者に尋ねました。
 私たちは、敵と見方、善と悪、という二項対立によって物語を構成し、バルバラを敵として、悪として描いていましたが、この子は、バルバラを生まれながらの悪人とは決めつけませんでした。
 絵で絵を教えたり、オペレッタでオペレッタを教えるのではなく、絵やオペレッタに子どもとともに取り組むことで、表現することの意味を子どもたちに伝えたいのです。表現することが生きることであるとするなら、私たちは、絵やオペレッタで、生きることの意味を子どもたちとともに考えたいのです。
どんなにすばらしい絵が完成し、どんなに上手なオペレッタが本番を飾ろうとも、生きることの意味は、その取り組みの過程である日々の保育の展開に、立ち現れます。

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